インビザラインで治療できない6つの症例と対処法について
歯列矯正治療を受けたいと考えている方に向けて、インビザラインで治療できない症例について解説します。
インビザラインで治療を受けたいと考えていても、「どの症例まで対応できるのか?」と疑問に思われる方は少なくありません。
実際にインビザラインでは治療できない症例もあります。
そこで今回の記事では、治療できない症例と、治療できない場合の対処法について解説します。
記事を読んでいただければ、ご自身の症例でインビザライン治療が行えるのか、適切な治療法とともにおわかりいただけるはずです。
目次
インビザラインとは
「インビザライン」とは、マウスピースによって歯を移動させる矯正装置のことです。
アメリカのアライン・テクノロジー社が開発した装置で、現在では世界100か国以上で使用されています。
透明なマウスピースを装着して治療を進めるため、目立ちにくいことから多くの患者様に選ばれる治療法です。
マウスピース型の矯正装置ブランドは他にもあります。
しかしインビザラインは世界で広く信頼されているブランドです。
関連記事:インビザラインで後悔する5つの原因に対処する方法と注意点
インビザラインができない症例
広く利用されているインビザラインですが、治療できない症例があることも事実です。
どのような症例でインビザラインが対応できないのか見ていきましょう。
ケース①重度の叢生の場合
まずは重度の叢生の場合です。
叢生とは歯が重なっていたり、ずれていたりして歯並びがデコボコになっている状態を指します。
基本的に顎が小さく歯が大きいことが原因です。
治療を行うには大きく歯を動かさなければなりません。
インビザラインでは大きく歯を動かすのが難しいため、治療できない症例のひとつとなります。
ケース②重度の出っ歯の場合
重度の出っ歯の場合もインビザラインは適していません。
出っ歯となる原因は、上顎の成長が過剰であり、下顎とのバランスがとれなくなることです。
そのため顎の骨を矯正するための外科手術が必要となります。
インビザラインは歯を移動させるための装置であるため、適応が難しくなります。
ケース③重度の受け口の場合
重度の出っ歯とともに、受け口の場合も同様にインビザラインでは矯正できない症例です。
受け口の原因も上下の顎の骨にズレが生じることに由来します。
そのため矯正治療とともに顎の骨への外科手術が必要です。
インビザラインよりもワイヤー矯正のほうが向いています。
ケース④重度の歯周病がある場合
続いての症例は重度の歯周病がある場合です。
歯周病では歯肉に炎症が起こり、歯を支えている骨が溶けてしまっている場合があります。
かなり進行している状態では矯正治療によって、歯が抜けてしまう可能性もあるでしょう。
そのためインビザラインだけでなく、その他の矯正治療も行えません。
ケース⑤インプラントが埋入されている場合
インプラントが埋入されている場合の矯正治療も、インビザラインでは対応できません。
なぜならインプラント治療を受けると、歯根膜がなくなってしまうためです。
インビザラインでは歯根膜の収縮により歯を移動させます。
そのため歯根膜がない状態では、十分な治療結果が得られません。
ケース⑥歯が埋状している場合
インビザラインで治療できない症例として最後にご紹介するのは、歯が埋伏しているケースです。
埋伏とは歯の萌出が途中で止まり、完全に出てきていない状態のことを指します。
歯が埋伏していると表に出ている歯の長さが短く、マウスピース型の装置では矯正が難しくなります。
インビザラインが向いていない人の特徴
インビザラインで治療できない症例に該当しなくても、治療に向いていないタイプの人もいます。
たとえば次の3つの特徴に当てはまる場合、その他の矯正治療法を検討したほうが良いでしょう。
特徴①マウスピースの管理ができない
まずはマウスピースの管理が難しい人です。
インビザライン治療中はマウスピースをご自身で管理していただかなければなりません。
定期的に交換したり、衛生管理をしたりする必要があります。
そのためマウスピースを適切に管理できない場合、治療が中断されてしまうこともあり向きません。
特徴②マウスピースを長時間装着できない
何らかの理由でマウスピースを長時間装着できない場合も、インビザラインが向いていないと考えられます。
インビザラインで治療結果を得るには、1日22時間以上装着していなければなりません。
22時間以上の装着が難しい場合は、インビザラインでの治療を避けたほうが良いでしょう。
特徴③こまめな通院ができない
インビザラインは定期的にこまめな通院ができない人にも向いていません。
マウスピース型の矯正装置は、定期的に新たなマウスピースに交換してはじめて治療結果が得られるためです。
通院ができなければ歯が動かず、治療が長引いてしまいます。
インビザライン以外の歯科矯正治療
インビザラインには治療できない症例があり、向いていない人もいます。
しかし対応できない症例や向いていない人の特徴に当てはまっても、矯正治療は受けられます。
次のような方法なら、インビザラインよりもスムーズに治療が進むかもしれません。
ワイヤー矯正
まずは装着したワイヤーで歯を移動させる「ワイヤー矯正」です。
最も一般的な歯科矯正方法で、ブラケットと呼ばれる装置を用いて、ワイヤーの弾力性によって歯を移動させます。
歯に装着するワイヤーは銀色のものが一般的です。
しかし透明で目立ちにくい「クリアブラケット」も選べます。
メリット
それではワイヤー矯正のメリットを見ていきましょう。
【メリット】
- ・これまでに多くの実績があるため信頼できる
- ・歯を大きく動かせる
- ・重度の叢生にも適応できる
- ・費用を抑えられる
- ・取り外す必要がなく管理が簡単
広く用いられてきた方法であるため実績があり、歯を大きく移動させられるのがメリットです。
重度の叢生では歯を大きく動かさなければならないため、インビザラインで治療できない症例となります。
しかしワイヤー矯正であれば理想の歯並びになれるでしょう。
また他の歯科矯正に比べて、費用が抑えられることもメリットのひとつです。
インビザラインの管理が難しい方にとっては、取り外しの必要がないこともメリットとなるかもしれません。
デメリット
ワイヤー矯正にはメリットだけではなく、次のようなデメリットもあります。
【デメリット】
- ・矯正装置が見えて目立つ
- ・歯のケアがしにくい
- ・痛みや違和感が強い
ワイヤー矯正のデメリットは、矯正装置が歯の表面にあり目立つことです。
接客業など人と接する仕事をされている人であれば、口元が気になるかもしれません。
しかし銀色のワイヤーではなく、透明のクリアブラケットを選べば目立ちにくくできます。
また歯にワイヤーを装着するため、食べ物などが間に挟まりやすくなります。
歯のケアが大変だと感じられるかもしれません。
歯を移動させる力が大きいため、痛みや違和感を感じやすいこともデメリットです。
裏側矯正
「裏側矯正」も、インビザラインが治療できない症例に向いている治療方法です。
裏側矯正とは歯の表面ではなく、裏側にワイヤーを取り付ける方法のことを指します。
ワイヤー矯正よりも歯を動かす力が強いのが特徴です。
メリット
それでは続いて、裏側矯正のメリットについて見ていきましょう。
【メリット】
- ・出っ歯や受け口の治療ができる
- ・矯正装置が目立ちにくい
- ・口内のトラブルが起こりにくい
- ・取り外す必要がなく管理が簡単
裏側矯正ではインビザラインでは対応できない症例である、出っ歯や受け口にも対応できる可能性があります。
さらに表側にワイヤーをかけるワイヤー矯正に比べて、装置が目立ちにくいこともメリットです。
インビザラインに「目立ちにくい」とのメリットを感じている人であれば、裏側矯正が選択肢のひとつとなるでしょう。
デメリット
裏側矯正のデメリットについてもご紹介します。
【デメリット】
- ・口内や舌に違和感をいだきやすい
- ・口内炎ができやすくなる
- ・毎日のケアがしにくい
- ・発音しにくくなることがある
- ・ワイヤー矯正よりも費用が高い
裏側矯正のデメリットは、治療費が高くなりがちであることと、舌や口内に違和感がある可能性があることです。
違和感にともなって口内炎ができやすくなったり、発音がしにくくなったりすることもあります。
またワイヤーが装着されていることから、毎日のケアが大変だと感じるかもしれません。
歯のケアの大変さはワイヤー矯正でも同じですが、裏側矯正はワイヤー矯正より費用が高くなります。
大変さは変わらないものの、費用が高くなることをデメリットだと感じることもあるでしょう。
インビザラインとワイヤーの併用
インビザラインで治療できない症例に対しては、インビザラインとワイヤーを併用する方法が採用されることもあります。
最初にワイヤー矯正で大きく歯を動かし、その後、インビザラインで整える方法です。
ワイヤーとインビザラインのメリットを活かし、デメリットをカバーする効果的な方法と言えます。
メリット
インビザラインとワイヤーを併用する治療のメリットは次のとおりです。
【メリット】
- ・インビザラインでは治療できない症例に使える
- ・ワイヤーをつける期間が短くなる
- ・治療期間が短縮できる
ワイヤー矯正との併用は、インビザラインで治療できない症例に効果的です。
歯を大きく動かせるものの、ワイヤーを装着する期間は短くなるため審美上のストレスも軽減できます。
またインビザラインだけの治療よりも、治療期間を短縮化できることもメリットです。
以上のようにワイヤーと併用する方法は、お互いの「良いところ取り」ができる治療方法となります。
デメリット
ワイヤーとインビザラインの併用には、次のようなデメリットがあります。
【デメリット】
- ・2つの矯正方法について知識を得なければならない
- ・両方の治療方法で経験豊富なクリニックを選ぶ必要がある
- ・費用が高くなることがある
- ・見た目に目立つワイヤー矯正をする期間がある
2つの治療方法を混ぜるやり方であるため、両方の治療方法について知識や注意点を学ばなければなりません。
患者様だけでなく、クリニック側も両方の治療方法について熟知している必要があります。
そのためどちらか片方だけで治療をする場合より、患者様側の対応やクリニック選びが難しくなるでしょう。
費用が高くなること、ワイヤーをかけなければならない期間があることもデメリットと言えます。
ワイヤーとインビザラインの併用治療はメリットも多いですが、以上のようにデメリットがあることも知ったうえで治療を受けてください。
インビザラインでできない症例にも方法によっては対応可能
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、インビザラインでできない症例への対応方法がご理解いただけたと思います。
インビザラインで治療できない症例があることは事実です。
しかしワイヤー矯正や裏側矯正なら治療はできます。
インビザラインとワイヤー矯正を併用すれば、お互いのデメリットもカバー可能です。
船堀の矯正歯科・船堀ガーデン歯科 矯正歯科ではインビザラインとワイヤー矯正の両方に対応しています。
マウスピースだけでは難しい症例にも対応できますので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事を監修した人
船堀ガーデン歯科 矯正歯科 院長
東京医科歯科大学歯学部歯学科を卒業。ワタナベ歯科医院へ6年間勤務医として数多くの症例に携わり、歯科治療技術を研鑽。2020年5月、「船堀ガーデン歯科 矯正歯科」を開院。
一般歯科だけではなく、矯正歯科治療にも力を入れており、2022年にはインビザライン社から功績を認められ、インビザラインGo ゴールドプロバイダーを受賞。地域に密着し、「見てわかる」をモットーに丁寧でわかりやすい治療を提供している。
【略歴】
- 東京医科歯科大学歯学部歯学科 卒業
- ワタナベ歯科医院勤務
- ワタナベ歯科医院勤務
【メディア取材記事】